健康食品の今と昔

魂の出会い

インテグレーティブメディスン協会
代表理事 加藤雄邦

人生の目標を見出せずにいた私は大学紛争まっただ中の1973年(昭和48年)大学を卒業と同時に渡米しました。ニューヨークで講談社インターナショナルアメリカ代表の崎山さんと知り合いになり、崎山さんより「加藤君、アメリカで大活躍の日本人がおりますよ。貴方が興味があれば紹介状を書いてあげますよ」と言われ、すぐに二つ返事でお願いしました。
ニューヨークよりグレイハウンドのバスで5時間、ボストンバスターミナルにてバスを降車すると目の前に笑顔の久司道夫先生と奥様のアベリーヌ偕子先生がいらっしゃいました。それが、当時23歳の私と久司先生との出会いでした。
「食養」「正食」「マクロビオテック」という三つの言葉があります。今は日本でも海外でもポピュラーな言葉ですが、最初の二つは明治時代の日本陸軍の薬剤監、石塚左玄の用いた言葉であり、後の一つは桜沢如一、久司道夫が使った言葉です。今でこそ世界の食文化の中で万人が認める健康食は、「和食」となり得たのは日本古来の玄米食と伝統的和食を「マクロビオテック」の理念と実践を通じ、アメリカ人に認めさせた久司道夫の功績ではないでしょうか。
1970年代のアメリカは肥満や生活習慣病の広がり、農薬に汚染された食品の危険性に対する国民の危機意識が深まりつつあった時代でした。そんな中、久司道夫が称える「マクロビオテック健康法」がすんなりと受け入れられた訳ではありません。

建国以来、自助自立の精神を育んできたアメリカ国民は、根拠の無き事は大変厳しいものがありました。久司道夫はアメリカ人の大好物の肉食中心の食事から穀物と野菜中心の食事に切り替え、肉体の自然治癒力を高めることによって病気を治し、健康な生活が送れると訴えました。それによって、生活習慣病や難病を治すとアピールしたことが医学の専門家たちの猛反発を買うことになり、久司の出す食事療法による臨床例は、偶然または、プラシボ効果により治癒した単なる逸話に過ぎず、科学的根拠に乏しいと、ことごとく難癖をつけられました。
しかし、インディアナ州リッチモンド、ポール州立大学の音楽教授のジーン・ケラーさんのすい臓がん治癒の事例が事態を一変させます。それまで、すい臓がんは不治の病で、発病後半年から一年以内で亡くなるとされていました。それが「マクロビオテックの食事療法」をケラーさんが導入することによって、不治の病から生還したことをケラーさんご本人が、地元テレビ番組や講演会で発表したのです。ケラーさんの嘘の無い人柄や講演が人々の感動を生み、その結果、医学の専門家たちがマクロビオテックの治療効果に、正面から関心を抱き始めたのです。全米心臓協会のマクロビオテック実践者たちの血圧とコレステロール値の研究発表が医学雑誌などで発表されると大きな反響を呼びました。
また、ハーバード大学医学部の研究者たちが、ヨーガ、ベジタリアンなどのメンバーたちの血液検査の数値と比較したところ、マクロビオテックの実践者たちの数値が最も優れていることが判明しました。現代の代替医療である、鍼灸・漢方などが治療に際して、医学的データが出にくいのに対し、食事療法であるマクロビオテックは明確なデータを出すことができる。この科学的裏付けが、あの厳しいアメリカ人を納得させたのです。後に、この食事療法から派生するヴァイタミン・サプリメント・ハーブ等々の商品の製造に対しても科学的根拠という指針を与えたことにより、現在のアメリカが、国民より支持されているサプリメント大国となり得たのだと思います。
四年後(1977年)民主党の大統領候補になったこともある、ジョージ・マンガヴァンが「アメリカの食事目標」として定められた「マンガヴァン・レポート」を発表します。この報告書を作成したアメリカ上院の委員会は「マクロビオテック」を大いに参考にした、とあります。ジョージ・マクガヴァンもマクロビオテックの食事療法を「癌を防ぐ上で効果のある、興味深い食事法である」と議会で証言しています。このレポートが全米の医学の専門家・食品企業・健康食品会社・公教育関係者・消費者団体に与えた影響は測り知れない程大きく、深くアメリカの健康関連産業のバイブルとなり、健康的なアメリカとして世界への発信となっているのを確信します。
国連には「国際マクロビオテック協会」が設けられました。1977年にアメリカ合衆国大統領に就いたジミーカーターは、マクロビオテックの影響で豆腐や味噌汁などの日本食を愛好している、と公言していますし、後の大統領ビル・クリントンは、マクロビオテックの愛好者でした。
この40年間全米で、マクロビオテック・ベジタリアン・オーガニックを支持し、実践する者の数は着実に増え、それに伴い物資の需要が拡大し、玄米・味噌・醤油・海藻・有機栽培野菜(オーガニック)・サプリメント・ハーブ等を販売する店が増えてきました。最初の自然食品店は久司道夫が指導したボストンの「エレホン(Erehwon)」。それを範として、全米に「グットアース」「アロウヘッドミルズ」「ウエストブレー」「エデン食品」「生命の木」「チコサン」「ミセスグーチ」etc・・・大小合わせて全米で約2万店余りあります。ちなみに日本では最もポリシーが近い店は、岡山を中心に鳥取・島根・広島・徳島に展開している「アース・ファミリー」があります。
こうして、「マクロビオテック」はアメリカ社会で広く認知され、久司道夫は日本人として初めてアメリカの歴史博物館スミソニアンに殿堂入りを果たしたのです。40年の歴史を振り返りますと、アメリカ人の生への真剣さ、そして創造のダイナミズムには驚かされます。そしてそれに対して誤魔化しがきかないということです。これが、国際標準(グローバル・スタンダード)であることを実感しました。TPP参加は当然試練とはなりますが、避けては通れない道です。本物の日本人としての知恵と技術が世界で認められるという自負はあります。
1975年私は帰国しました。久司先生・アベリーヌ先生には、日本でこの運動を続ける旨をお話ししてお暇をいただきました。帰国後の日本は、水俣病・イタイイタイ病などの公害病の発生、赤色104号の添加物による食品公害などが社会問題化、脳卒中、癌、糖尿病の生活習慣病増加の兆しが表れておりました。
しかし、国民は病気は病院で治すものだと決めており、己の自然治癒力を高めて病気を治すという意識は低いものでした。自然食品や自然食品店は社会ではマイナーな存在でしかありませんでした。ましてや、健康食品はいかがわしい民間療法として薬事法取締の対象となっている状況です。あまりにもアメリカとは隔世の感がありました。
この原因は自然食品や健康食品を生産、製造、販売者側に、生活者保護のための製品に対する安全性、科学的根拠を求めるという意識が希薄であり、また、自画自賛ではなく第三者の検証による情報公開がなされないため、「いわゆる健康食品」という表現で蔑まれ、行政や医師は認めてくれない。それに、医師が国際的な流れになりつつあった、患者にサプリメント・ハーブ・食事療法を補完して治療に当たる補完代替医療も、まだ認知されていなかったこともあります。
1997年、東京大学医学部名誉教授・渥美和彦先生を中心に日本代替相補伝統医療連合会議(JACT 2008年にIMJに名称変更)スタート。諸先生方が集い医療を再構築すべく、代替・補完・伝統医療の検証が始まりました。

2002年12月には生活者に案して健康食品を選んでいただくため、その評価基準作りと情報公開を目的に日本ホリスティツク医学協会会長・帯津良一先生を初代理事長として、日本健康食品評価認証機構(FFF)が設立されました。この二つの団体の行動、一つは日本の高齢社会のファンダメンタルを見越した学識者団体(JACT)の未来の医療のグランドデザインの提言。もう一つは患者(生活者)目線の臨床医団体(ホリスティック医学協会)の補完療法の実践が国を動かしたものであります。2009年、補完代替医療を含む統合医療が国民のための医療として内閣府の国家プロジェクトになりま
2003年、生活者のためのサプリメントとしてインテグレーティブメディスン協会が推薦する「ラクティブラン」発売元(株)クラトンが日本健康食品評価認証機構(FFF)の厳格な検査を経て、FFF認定製品になります。
アメリカで1980年エイズ(HIV)が蔓延し、大きな社会問題となりました。パスツール研究所のモンタニエ博士とアメリカ国立衛生研究所のギャロ博士はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染がエイズ発症の原因と唱えていました。そのため、同性愛者、薬物中毒者のエイズ患者は厳しい差別に晒されていました。久司道夫はエイズ発症の原因は日常生活の食習慣にあり、これを改めることによってエイズの発症を防ぐこと、発症しても症状を改善させることが可能であると力説し、エイズ患者にマクロビオテックの食事療法を勧め、その血液分析をボストン大学チームに依頼し、安全で効果的な治療法として「ランセット」に発表しました。しかし、アメリカ医学界は、これは医療ではないと黙殺します。
1998年ロサンゼルスUCLAドリュー医科大のマンドゥ・ゴーナム博士の研究チームが玄米に含まれる米糠アラビノキシラン誘導体(学名バイオブラン)が、HIVを抑制し、T細胞・B細胞・NK細胞の著しい増加をもたらしたと報告し、改めてマクロビオテックの食事療法の見直しをされるきっかけとなりました。FFF認定製品「ラクティブラン」は、そのバイオブラン(米糠アラビノキシラン誘導体)含有の製品です。
次に、1999年第58回日本癌学会(広島)にて、金沢大学医学部・太田富久教授により発表されたアガリクス茸ABMKが、当協会の推薦品として2007年にFFF認定製品となります。この様に健康食品の中にも真摯な企業努力にも拘わらず、埋もれた製品が沢山あります。インテグレーティブメディスン協会は、医療者や生活者に客観的に正しく評価された製品をメディカルサプリメントとして、ダイエタリーサプリメントとして、お届けできるよう、今後とも日本食品評価認証機構(FFF)と協力して努力する所存です。
最後に2012年7月に時の政府より「日本再生戦略」が閣議決定されました。医療においては治療から予防の推進、生活者においては平均寿命から健康寿命への意識転換、そしてTPPへの参加と世の中が大きく変わりそうです。
皆様におかれましては、日本も世界も国際標準(グローバルスタンダード)という大きな渦に巻き込まれそうですが、日本らしさ、日本人らしさを失わなければ大丈夫だと確信します。皆様のご自愛とご健勝を、心よりお祈り申し上げます。
アベリーヌ偕子先生は2010年、ジョージ・マクガヴァンは2012年、久司道夫氏は2014年12月に永眠されました。心よりご冥福をお祈り致します。

《マクロビオテック(macrobiotics)》
西洋医学の祖といわれる古代ギリシャの哲学者「ピポクラテス」の使った「マクロビオス」に由来する。「マクロ」は大きい、「ビオス(バイオス)」は生命を意味し、マクロビオテックで「健康で長生き」という意味になる。

《インテグレーティブメディスン協会》
日本の健康食品の国際標準化を図り、医療者や生活者に製品を選ぶための客観的な評価と正しい情報を公開することを目的とし、日本統合医療学会(IMJ)・日本健康食品評価認証機構(FFF)の指導の下、1998年、国内・国外の製造メーカーと販売会社が集い、設立された任意の団体です。
皆様の積極的参加をお待ち申し上げております。
ホームページ:http://www.ima-jp.com/

参考文献

  • 「マクガヴァン・レポート」「アメリカの食事目標」松本英聖著(インテグレーティブメディスン協会 ウエルネスライフ講座)
  • 「ゼン・マクロビオテック」桜沢如一著(日本CI協会)
  • 「地球と人類を救うマクロビオテック」久司道夫著(文芸社)
  • 「世界が認めた和食の知恵」持田鋼一郎著(新潮新書)
  • 「バイオブランMGN-3論文集」バイオブラン研究会
  • 「協和のアガリクス茸試験報告書」(株)エス・エス・アイ
  • 「2030年超高齢化未来」東京大学高齢社会総合研究機構
  • 「ガンと闘う最新の機能性食品アラビノキシラン」帯津良一監修(実業之日本社)